C言語におけるビット演算は、ハードウェアの制御やアルゴリズムの高速化において極めて重要な役割を果たします。

その中でも「排他的論理和(XOR)」は、非常にユニークな性質を持っており、効率的なデータ処理や数値計算に欠かせません。

本記事では、C言語の排他的論理和演算子「^」の基本的な使い方から、知っておくと便利な応用テクニックまでを詳しく解説します。

排他的論理和(XOR)の基礎知識

プログラミングにおけるビット演算の一つである排他的論理和(Exclusive OR、略してXOR)は、2つのビットを比較して「どちらか一方のみが 1 の場合に 1 を返し、両方が同じ場合には 0 を返す」演算です。

XORの真理値表

まずは、ビット単位での挙動を理解するために真理値表を確認しましょう。

入力Aと入力Bに対する出力結果は以下の通りです。

入力A入力B出力(A ^ B)
000
011
101
110

この表からわかるように、「値が異なる場合だけ 1 になる」というのがXORの最大の特徴です。

この性質を利用することで、特定の数値を反転させたり、データの不一致を検出したりすることが可能になります。

C言語での表記法

C言語において、排他的論理和を計算するための演算子は ^ (キャレット)です。

また、他の算術演算子と同様に、計算と代入を同時に行う複合代入演算子 ^= も用意されています。

C言語での基本的な使い方

C言語のプログラム内で ^ 演算子を使用する例を見ていきましょう。

ビット演算は整数型(int, char, long など)に対して行われます。

基本的なビット演算のコード

以下のプログラムは、2つの整数に対してXOR演算を行う例です。

C言語
#include <stdio.h>

int main() {
    // 10進数の 10 は 2進数で 1010
    // 10進数の 12 は 2進数で 1100
    int a = 10;
    int b = 12;

    // XOR演算を実行
    int result = a ^ b;

    /*
     計算プロセスの解説:
     1010 (a)
     ^ 1100 (b)
     --------
     0110 (結果: 10進数で 6)
     */

    printf("a = %d, b = %d\n", a, b);
    printf("a ^ b の結果: %d\n", result);

    return 0;
}
実行結果
a = 10, b = 12
a ^ b の結果: 6

このように、各ビット位置ごとに真理値表に基づいた計算が行われます。

2進数で見ると、「1ビット目と3ビット目は両者で異なるため1になり、2ビット目と4ビット目は同じであるため0になる」という動きが確認できます。

排他的論理和が持つ重要な数学的性質

XOR演算には、アルゴリズムを構築する上で非常に便利な4つの主要な性質があります。

これらを理解しておくことで、コードの最適化や複雑なロジックの簡略化が可能になります。

1. 交換法則

A ^ B = B ^ A が成り立ちます。

演算の順番を入れ替えても結果は変わりません。

2. 結合法則

(A ^ B) ^ C = A ^ (B ^ C) が成り立ちます。

複数の値をXORする場合、どのペアから計算しても最終的な結果は同一です。

3. 零元(Identity element)の存在

A ^ 0 = A となります。

どんな数値に対しても、0 でXOR演算を行っても元の値は変わりません。

これは、ビットマスク処理などで「特定のビットを保持したい」場合に役立ちます。

4. 自己逆元(Self-inverse)

A ^ A = 0 となります。

自分自身と同じ値でXOR演算を行うと、必ず 0 になります。

この性質は、特定のデータ集合の中から重複を排除したり、同じ処理を二度繰り返して元に戻したりする操作に応用されます。

実践的な応用例1:一時変数を使わない値の入れ替え(XORスワップ)

通常、2つの変数の値を入れ替えるには、一時的な作業用変数(tmpなど)が必要です。

しかし、XORの性質を利用すると、追加のメモリを使わずに値を交換することができます。

これを「XOR交換アルゴリズム(XOR Swap Algorithm)」と呼びます。

XORスワップのプログラム例

C言語
#include <stdio.h>

int main() {
    int x = 5;  // 2進数: 0101
    int y = 9;  // 2進数: 1001

    printf("交換前: x = %d, y = %d\n", x, y);

    // XORスワップの手順
    x = x ^ y; // 手順1
    y = x ^ y; // 手順2
    x = x ^ y; // 手順3

    printf("交換後: x = %d, y = %d\n", x, y);

    return 0;
}
実行結果
交換前: x = 5, y = 9
交換後: x = 9, y = 5

なぜ入れ替わるのか?

この仕組みは、先ほど挙げた「結合法則」と「自己逆元」の性質によって説明できます。

  1. x = x ^ y : xx ^ y という情報を保持させる。
  2. y = x ^ y : y(x ^ y) ^ y を代入。性質上 y ^ y = 0 なので、結果として y に元の x の値が入る。
  3. x = x ^ y : x(x ^ y) ^ x(この時点の y は元の x)を代入。x ^ x = 0 となり、結果として x に元の y の値が入る。

現代のコンパイラでは、通常の作業変数を用いたスワップの方が最適化されやすい場合もありますが、リソースが極めて限定された組み込み環境などでは知っておくと役立つテクニックです。

実践的な応用例2:特定のビットを反転させる(トグル処理)

XORは、特定のビットの状態を「0なら1に、1なら0に」切り替える「トグル」操作に最適です。

ビット反転の仕組み

特定のビットを反転させたい場合、その位置のビットが 1 であるような「マスク値」を用意してXOR演算を行います。

  • 元のビットが 1 のとき: 1 ^ 1 = 0 (反転)
  • 元のビットが 0 のとき: 0 ^ 1 = 1 (反転)
  • 反転させたくないビットは 0 と演算すれば、元の値が保持されます(A ^ 0 = A)。

トグル処理のサンプルコード

C言語
#include <stdio.h>

int main() {
    // 状態を管理するフラグ(初期値:0000 0001)
    unsigned char status = 0x01;
    
    // 3番目のビット(0x04 = 0000 0100)を反転させたい
    unsigned char mask = 0x04;

    printf("初期状態: 0x%02X\n", status);

    // 1回目のトグル
    status = status ^ mask;
    printf("1回目実行後: 0x%02X\n", status);

    // 2回目のトグル(元に戻るはず)
    status ^= mask;
    printf("2回目実行後: 0x%02X\n", status);

    return 0;
}
実行結果
初期状態: 0x01
1回目実行後: 0x05
2回目実行後: 0x01

このように、status ^= mask; を実行するたびに、特定のビットだけがスイッチのようにオン・オフされる挙動を実現できます。

これはLEDの点滅制御や、UIのフラグ管理などで頻繁に利用されます。

実践的な応用例3:簡易的なデータの暗号化

XOR演算の「同じ値を2回掛けると元に戻る」という性質は、極めてシンプルな暗号化処理に応用できます。

暗号化と復号のコード例

C言語
#include <stdio.h>
#include <string.h>

int main() {
    char data[] = "HelloXOR";
    char key = 'K'; // 暗号化キー
    int len = strlen(data);

    printf("元のデータ: %s\n", data);

    // 暗号化処理
    for(int i = 0; i < len; i++) {
        data[i] = data[i] ^ key;
    }
    printf("暗号化後: %s (読めない文字列になる)\n", data);

    // 復号処理(同じキーで再度XORをとる)
    for(int i = 0; i < len; i++) {
        data[i] = data[i] ^ key;
    }
    printf("復号後: %s\n", data);

    return 0;
}
実行結果
元のデータ: HelloXOR
暗号化後: #.&'*(%  (読めない文字列になる)
復号後: HelloXOR

もちろん、これは現代のセキュリティ要件を満たすような強力な暗号ではありません。

しかし、「通信データの簡単な難読化」「バイナリデータのパターンを消す」といった用途には非常に有効です。

共通鍵暗号方式の最も基礎的な概念を体現しています。

実践的な応用例4:重複のない数値を見つけるアルゴリズム

アルゴリズムの問題でよく出題されるものに、「配列の中で1つだけ重複していない数値を見つける」というものがあります。

これを愚直にループで解こうとすると計算量が増えますが、XORを使えば一瞬で解決します。

重複チェックの仕組み

全ての要素を順番にXOR演算していくと、2つずつ存在する同じ数値は互いに打ち消し合って 0 になります

最終的に残った値が、1つだけ存在していた数値となります。

C言語
#include <stdio.h>

int main() {
    int nums[] = {4, 1, 2, 1, 2};
    int n = sizeof(nums) / sizeof(nums[0]);
    int unique_num = 0;

    for (int i = 0; i < n; i++) {
        unique_num ^= nums[i];
    }

    printf("1つだけ存在する数値は: %d\n", unique_num);

    return 0;
}
実行結果
1つだけ存在する数値は: 4

この手法は、計算量が O(n) であり、追加のメモリも不要という極めて効率的な解法です。

注意点と演算子の優先順位

C言語でXORを使用する際には、いくつかの注意点があります。

特に初心者が陥りやすいのが「演算子の優先順位」です。

優先順位の罠

C言語において、^ 演算子の優先順位は、比較演算子(==, !=)よりも低いという点に注意が必要です。

以下のコードを見てみましょう。

C言語
if (a ^ b == 0) { ... }

意図としては「a と b が等しい(a ^ b が 0)」ことを判定したいかもしれませんが、優先順位の関係で b == 0 が先に評価されてしまいます。

正しく動作させるためには、必ずカッコを使用してください。

C言語
if ((a ^ b) == 0) { ... }

符号付き整数への適用

ビット演算は通常、unsigned(符号なし)型に対して行うのが安全です。

符号付き整数の場合、最上位ビット(符号ビット)がXOR演算によって予期せず変化することで、負の数に関連した複雑な挙動を引き起こす可能性があるためです。

ビット操作を目的とする場合は、uint32_t などの型を使用することを推奨します。

まとめ

C言語の排他的論理和演算子 ^ は、単純な「1か0か」の比較を超えた、非常に強力なパワーを秘めています。

  • 基本: 2つのビットが異なる場合にのみ 1 を返す。
  • 性質: 同じ値を2回重ねると元に戻る(自己逆元)。
  • 応用: 変数の入れ替え、ビットのトグル、簡易暗号、重複チェックなど。
  • 注意: 演算子の優先順位に気をつけ、必要に応じてカッコを使用する。

これらの特性を理解し使いこなすことで、プログラムをより効率的でスマートなものに変えることができます。

ビット演算は一見難解に思えるかもしれませんが、仕組みさえ理解してしまえば、低レイヤーの制御から競技プログラミングまで幅広いシーンで武器になるはずです。

ぜひ、日々のコーディングの中で積極的に活用してみてください。