Microsoftは、Copilot Studioの実行エンジンを.NET 10へとアップグレードしたことを公式に発表しました。

2026年5月の最新アップデートにより、WebAssembly (WASM) 上で動作するC#のパフォーマンスが劇的に向上しています。

これまで.NET 8を基盤としていたCopilot Studioが、最新の.NET 10へと移行したことで、ユーザー体験にどのような変化をもたらすのか注目が集まっています。

本記事では、今回の移行によって実現した最大20%の高速化の裏側と、開発プロセスの簡素化について詳しく解説します。

.NET 10へのシームレスな移行とデプロイの進化

既存の.NET 8 WebAssemblyアプリケーションを.NET 10へ移行する作業は、非常にスムーズに進行しました。

開発チームが行った主な作業は、プロジェクトファイル内のターゲットフレームワークを更新し、依存関係の互換性を確認することのみです。

このシンプルさは、.NETプラットフォームが継続的に進化し、後方互換性を重視していることの証左と言えるでしょう。

自動フィンガープリントによる運用の効率化

.NET 10におけるWebAssemblyアプリケーションの大きな変更点の一つが、アセットの自動フィンガープリント機能です。

アプリケーションをパブリッシュする際、各ファイルのファイル名に一意の識別子が自動的に付与されるようになりました。

これにより、開発者が手動でスクリプトを組むことなく、キャッシュバーストとデータの整合性を保証することが可能になります。

以前のCopilot Studioでは、以下のような複雑な工程を自前で実装する必要がありました。

  • パブリッシュされたマニフェストファイルを読み取り、全アセットを列挙する。
  • PowerShellスクリプトを実行し、各ファイル名にSHA256ハッシュ値を付加する。
  • JavaScript側からリソースを要求する際に、明示的に整合性引数を渡す。

.NET 10ではこれらの作業が一切不要となり、チームはカスタムスクリプトの多くを削除することに成功しました。

WasmStripILAfterAOTによるバイナリの最適化

.NET 10のWebAssemblyにおいて、もう一つの重要な変更点はWasmStripILAfterAOTがデフォルトで有効になったことです。

実行速度とパッケージサイズのバランス

Ahead-of-Time (AOT) コンパイルを行った後、元の中間言語 (IL) は実行時には不要となります。

.NET 10では、この不要なILをパブリッシュ出力から自動的に削除するため、ランタイムの効率が向上します。

Copilot Studioは、起動速度を優先するJITエンジンと、実行速度を優先するAOTエンジンを並列でロードする高度な戦略を採用しています。

ILの削除によって、JIT用とAOT用で共有できるファイルが減少し、パッケージサイズは約15%増加するという側面もあります。

しかし、JITエンジンが先に動作することで初期の操作性は維持されるため、ユーザーへの実質的な影響は最小限に抑えられています。

測定されたパフォーマンスの向上

この最適化がもたらすメリットは、パッケージサイズの増加というコストを遥かに上回るものです。

特に複雑なロジックを持つ「大規模なボット (Big Bot)」において、その効果は顕著に現れています。

実行タイミングパフォーマンス向上率
初回呼び出し (Cold Path)約20% 高速化
2回目以降 (Warm Path)約5% 高速化

このデータからも明らかなように、初回の応答時間が劇的に短縮されたことは、エンドユーザーの満足度向上に直結します。

WebAssemblyアプリを.NET 10へアップグレードする方法

現在、.NET 8でBlazorやWebAssemblyアプリケーションを運用している場合、.NET 10への移行を強く検討すべきです。

移行の手順は非常にシンプルであり、以下のコード例のようにプロジェクト設定を変更することから始めます。

XML
<Project Sdk="Microsoft.NET.Sdk.BlazorWebAssembly">
  <PropertyGroup>
    <!-- ターゲットフレームワークを.NET 10に変更 -->
    <TargetFramework>net10.0</TargetFramework>
    <!-- AOTコンパイルを有効にする -->
    <RunAOTCompilation>true</RunAOTCompilation>
  </PropertyGroup>

  <ItemGroup>
    <!-- 各パッケージも最新の10.0系に更新 -->
    <PackageReference Include="Microsoft.AspNetCore.Components.WebAssembly" Version="10.0.0" />
  </ItemGroup>
</Project>

プロジェクト設定を更新した後は、ビルドを実行してフィンガープリントが正しく生成されているか確認してください。

実行結果
MSBuild version 17.14.0 for .NET
Determining projects to restore...
Restored project.csproj (in 1.2 sec).
Optimizing assemblies for WebAssembly...
WasmStripILAfterAOT: Stripping unused IL from AOT bundles.
Successfully published application to ./bin/Release/net10.0/browser-wasm/publish/

手動でハッシュ値を付与していた古いスクリプトは、この機会に全て削除してしまいましょう。

まとめ

Copilot Studioの.NET 10への移行は、WebAssembly上でのC#実行がいかに成熟してきたかを示す好例です。

自動フィンガープリントによるデプロイの簡素化と、WasmStripILAfterAOTによる実行速度の向上は、開発者とユーザーの両方に多大な利益をもたらします。

2026年5月のアップデートで示された「最大20%の高速化」という成果は、.NET 10がWebAssembly開発における最強の選択肢であることを証明しています。

最新の技術スタックを取り入れ、より高速でモダンなWebアプリケーション開発を今すぐ体験しましょう。